未完成のヒトガタ
「空白の肖像 古代青銅器と人々」を鑑賞した方々から「左の4つはピカピカで、右の2つが異なっているのはどのような意図なのでしょうか?」とご質問いただきました。
展示台の上に並んだ青銅器をもったヒトガタは、左から右に向かって時代が進んでいくような並びになっています。
ピカピカしていない右の2つは鋳込み後に鋳型から取り出したばかりの姿(1番右)と、そこから少し仕上げを進めた状態のもの(右から2番目)です。
古代青銅器が繁栄した時代は長く、さまざまな青銅器とその青銅器が登場する時代に生きていた「空白の肖像」のヒトガタのイメージはこの展示台から溢れていきます。今回の作品の完成とする姿を左4つとすると、右2つは未完成。この未完成の作品のあとにはまだ鋳物になっていない原型やイメージ段階のヒトガタが続いていきます。展示台の上では終わらずに、さらにこのあとにもまだまだイメージは続いていきます。
今回の鋳物の工程には【原型→鋳型→鋳込み→型ばらし→仕上げ】があり、展示台上で左からこの状態を逆に並べていったことになります。それは工房で鋳物が生まれていく工程そのものでもあります。
砂の鋳型は小豆島北西部で紀元前4000万年前に形成された砂岩の砂(土庄層群/伊喜末層)を用いた鋳型から取り出されたばかりのヒトガタ。小豆島の地名がついた地層です。海岸に露出しており、侵食によって表面が崩れています。この太古の記憶をもつ砂に鋳込まれた古代青銅器が繁栄した時代の「空白の肖像」たちが展示台の上で静かに並んでいます。
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